童謡 ぞうさん
中原寺 平野俊斉
💚2月の法話💚
我が家では大人が読む新聞とともに、子どもたちのために「小学生新聞」を購読しています。少しでも子どもたちに、世の中で起きていることに関心を持ってもらいたいという親心でありますが、実際には私たち夫婦のほうが熱心に読んでいることが多いです。「小学生新聞」といっても侮ることなかれ、ニュースに出てくる用語を分かりやすく解説してくれたり、子どもたちの間で流行しているものを紹介してくれたりするので、感心することも多々あります。
先日の紙面において、童謡『ぞうさん』の歌詞について掲載されていました。冒頭の「ぞうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね」と話しかけているのは「象以外の生き物」です。鼻が長くないものが、自分とは違って鼻の長い象の子に悪口を言っているのだそうです。それに対して象の子は、しょげたり怒ったりすることなく「そうよ、かあさんも長いのよ」と返します。自分の大好きなお母さんと同じ姿でいることに喜びを感じ、誇りをもっていることが窺えます。
作詞した、まどみちおさんはこの歌について「ぞうがぞうとして生かされていることが、すばらしいと思っている。だからこの歌は、ぞうに生まれてうれしいぞうの歌」と述べられています。象の子の返事から、自分が自分として生まれてきたことを引き受けた姿が見て取れます。決して他のものと比べることなく、ありのままの自分をそのままに受け止めて生きる姿が、そこにはあります。
私たちは常に他者との比較のなかに自らを置き、ときに優越感に浸り、ときに劣等感に悩まされて生きています。自らが多数派にいることに安心を感じ、他者との違いにばかりに目を向け、相手をさげすんだり、非難ばかりしているのが私たちの姿ではないでしょうか。その姿はありのままの自分を、まず自分自身が大切に思い、喜びを感じている象の子とは真逆の姿です。比較のなかに生きる人生は、他者からも、そして自らにも大切にされない人生になってしまいます。 阿弥陀さまは、私のいのちを決して比べることなく、評価することなく、さばくことなく、そのままに受け止め抱きとってくださる仏さまです。この私を見捨てることがない仏さまによって、私が私のままに認められたのです。あみださまの「決してあなたの人生を空しいものとはしない」との願いとおはたらきのなかに私のこのいのちは包まれているのです。