災害ボランティアの実際を学ぶ
『千葉組僧侶研修会』開催報告 (文責・僧研担当小林覚城)
○日時…2020年9月4日(金)13:00~16:10
○会場…鋸南町立 中央公民館 「講座室」
○講師…堀田了誓氏
(『鋸南RCV(ロータリークラブ・有志ボランティアグループ)代表』並びに 『鋸南復興アクセラレーション』代表 最誓寺寺族)
堀田了正師(最誓寺住職)
笹生さなえ氏(『鋸南復興アクセラレーション』副代表
研修会内容
当日は、吉弘組長を始め組より7名が参加し、また最誓寺総代の中邑明俊さんもご参加になられた。
また講座室内が密にならぬように座席間隔を十分に取ることに留意。また熱中症対策として、組長が飲料をご持参下さった。
まず、2019年9月9日の台風15号による、鋸南町の被害状況がプロジェクターなどを用いて説明された。家屋の倒壊、屋根の破損、電柱倒壊そして停電、携帯電話の不通、冷蔵庫・エアコン使用不可能など厳しい状況が説明される。
信号が機能せず、車の走行も危険が伴うことになった。
ともかく情報がない中、堀田了誓氏は「やれることを今やろう。知識も経験もなく、事態の把握も出来ない中でも今動かなければ…」と被害の大きな地域(特に鋸南町岩井袋等)へ向かったそうである。そこで同じような気持ちで駆けつけた人々と出会い、長期的な復興に向けてボランティア団体(鋸南RCV)を立ち上げた。
様々な世代、地域からやってきた、職業も異なる多くの方が自分の出来ることを通して、被災者を救いたい、助けたいと活動を重ねてきた。
しかし2020年になってコロナウィルス感染防止対策が必要とされ、他県から来てくれていたボランティア(延べ90名程)は活動停止を余儀なくされ、地元以外のボランティアの受け入れは一時休止となってしまった。
現在は、ボランティアには体温の検温報告を行ってもらい、またボランティア活動も3密を避けて、人数を減らして行っている状態である。
当然 作業効率は落ち、現在の30件程のボランティア依頼件数がなかなか減らない状況である。
状況悪化を防ぐために、鋸南RCVとしては被災住民自らが出来る応急処置や、ブルーシートの取付方法を動画配信するなどしている。
鋸南復興アクセラレーション
○目的…鋸南町在住で台風15,19,21号で被災した方、又被災により困窮している方への支援
○活動…
・屋根の雨漏り対応、室内(天井や床、床下)のカビ除去、被災家財の撤去などのニーズを汲み取り、対応を行い、また他の団体に対処を依頼する。
・防災対策の講座や講習(天井破損時にビニールシートを室内に張ることでの応急的な雨漏り対処法など)
・足湯を用意してのイベントや被災者に寄り添っての傾聴活動
・鋸南町への関係人口を増やすことや、地域の活性化・コミュニティ作りの推進
研修を受けての感想
・鋸南町での被災世帯は2510世帯で、被災世帯率はなんと68.4%とのこと。千葉県合計では被災世帯率は2.2%である(千葉県防災危機管理部発表による)。同じ千葉県でもこれだけの地域差があり、それが被災(家屋・住民)に対する温度差を生んでいる。
・カビが恐ろしい。黒いまだら模様が被災家屋の天井・壁・床にはびこる映像がショッキングであった。また畳の表面より以上に裏面・内部にカビが浸透・発生しており、そのことによる健康被害が心配される。
・ボランティアとは名ばかりで、そのフリをして被災家屋で窃盗を行う者がいたとのこと。心情的に許せないが、かといってどうやって本当のボランティアと見分けるのかが非常に難しいと思われる。本人確認が必要とされるだろうが、その為にまた手間が増えてしまうし、またそうしても複数のボランティアがいた場合、犯人特定は難しい。
・ボランティア活動を続ける方の言葉「それまでは『もう直さなくてもいい』とか『もう死にたい』と嘆いていた被災者が、ボランティア活動の後ぱっと笑顔に変わる。その顔が見たくてボランティアを続けています」…とても印象的であった。
・ダメージは弱いところへ…被災住民、なかでも子供の心のケアの必要性が実感された。
・被災直後よりはブルーシートの掛かった住宅は明らかに減ったが、それは復旧した場合と、又一方で更地にした場合(空き地化…転居してしまった)の両方とのこと。
・地域の復旧では自治体の体力差による差が大きい。大企業が立地している自治体は財政面で有利で、明らかにその地域の復旧は早いとのこと。
・損壊家屋の補助金申請は多くない(鋸南町では一部損壊家屋に対する20万円以上の補助金申請は1500件程度を見込んでいたが、実際は360件しか申請されず)。補助金は修理後に支給されるため、そもそも修理の出来る経済力がないと補助金はもらえない。
・申請書を提出することも、単身高齢者にとってはずいぶんな負担である。そもそも「助けて欲しい」と言えない(どこへ、誰に…がわからない)方がたくさん存在する。
・鋸南町の瓦店は2軒しかなく、かといって昔からの付き合いがあるため他地域や新規の参入業者に修理依頼をすることは難しいという(感情面で)。新築するにしても地元業者との関係を壊したくないとの思いから、ハウスメーカーに依頼することが出来ない…これらは復興・復旧が進みにくい一因か。
・20万円以上とはいえ、その補助金を超える額を支払うことが困難で、そもそも修繕工事契約に至らないことがあるという。
・ボランティアの方は車中泊などをしながら、活動を継続していた。中には「家族の反対を押し切ってまでボランティアに参加している」など、それぞれのお方もいろいろな問題を抱えている場合がある。
・一生懸命にボランティア活動を行っていても、例えば「なぜうちにはブルーシートを張りに来ないんだ」などの被災者からお叱りを受けて心が折れてしまうこともある。その時はボランティア仲間に正直な気持ちを伝え、またいつでも戻ってきてと言われて、一時ボランティア活動を中断した方もある。
・お金の問題は本当に大きい。火災保険に加入していたなど経済力がある人は早くに家を建て替えることが出来る。一方でお金が無いと、修理が出来ず、ビニールシートを何度も貼り替えることになってしまう。自分が生きてる間だけ持てば良いからと、修理をあきらめるお年寄りも多い。
・困ったときの助けは「自助」→「共助」(ご近所・地域)→「公助」(役所・国)の順だそうである。まずは自分で出来ることをやっておく必要がある。
「鋸南復興アクセラレーション」HPより(一部抜粋)
町の復興は一人で出来るものではありません。「行政、住民、そして町外から来るボランティアさんなど、様々な人が一緒になって復興に向かっていくことが大切」という点で、意見が一致しました。
当「鋸南復興アクセラレーション」は町長、行政、住民そしてボランティア団体と連携を取りながら、前に進んでいきたいと考えています。
御講師が8頁にわたる研修レジュメを作成してきて下さいました。
被災状況、またボランティア活動等について、是非こちらをご覧になって頂きたいと存じます。