法話

涅槃会

浄興寺 渡邊恒行

今月(2月)15日は「涅槃会」をお迎え致します。「涅槃会」とは仏教をお説きくださったお釈迦様のご往生(涅槃)をご縁として勤められる法要です。

お釈迦様のご往生の様子を伝える経典に『Maha-parinibbana-suttanta(マハー・パリニッバーナ・スッタンタ)』があります。この経典を中村元先生が邦訳してくださり、『ブッダ最後の旅』と題され岩波文庫に収められておりますので、どなたでも手に取ることが出来ます。

35歳でお悟りを開かれ、45年の間インド各地を歩いて「法」を説き続けられたお釈迦様も80歳を迎えられます。

老齢となられたお釈迦様は、住み慣れたラージャガハ(王舎城)の霊鷲山を出発され、最後の旅へと出発しておられます。

経典『maha-parinibbana-suttanta』には、旅立ちの理由は語られず、ただ、淡々と次の様に記されています。

「そこで尊師は王舎城に、心ゆくまでとどまって、それから若き人アーナンダに告げた。

「さあ、アーナンダよ。我らはアンバラッティカー(の園)に行こう」と。

「かしこまりました」と、若き人アーナンダは尊師に答えた。」『ブッダ最後の旅』

旅立ちの理由を早島鏡正先生は次の様に推察されています。

「ブッダにとって一目その目で確かめたかったのは、ヴィドゥーダバ王によって同族シャカ族の人々が大量に虐殺され、ふるさとが完全にコーサラ国に併合されてしまったすがたであった。老境に達した者が、自分の生まれ、そして育ったふるさとで、安らかに周囲の人々とともに過ごしたいというのは、自然の心情であろう。(中略)ブッダは、侍者アーナンダ(阿難)など極少数の弟子たちと一緒に遍歴の旅に出たと思われる。ひたすら、わがふるさとをめざして。」『ゴータマ・ブッダ』早島鏡正著

お釈迦様は、いくつもの村々で法を説きながら故郷に向かい歩かれます。ベールヴァ村に入られた際に季節は雨季に入り、お釈迦様一行は3ヶ月間の雨安居へと入られました。この雨安居の時、お釈迦様は体調を崩しておられます。

「さて、尊師が雨期の定住に入られたとき、恐ろしい病が生じ、死ぬほどの激痛が起こった。しかし、尊師は、心に念じて、よく気をつけて、悩まされることなく、苦痛を堪え忍んだ。」『ブッダ最後の旅』

老齢のお釈迦様の体調に不安を訴える侍者アーナンダに対して、有名な「自灯明・法灯明」の法話が説かれています。

「それ故に、この世で自らを島とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、法を島とし、法をよりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ。」『ブッダ最後の旅』

「続いて、自らが亡くなった後は、「自らを灯明とし、自らを所依とし、法を灯明とし所依とせよ。と教え、ひたすら勤め励むべきことを説いている。「法」とは仏教徒一人ひとりの自らを照らす灯明であり、拠り所である。「自ら」とはその教法によって照らされたありのままの自己存在ということであろう。生きるということは、私が生きるということをおいて他にはない。結局、法を灯明として照らされた自らを灯明とし所依として、自らが仏道を歩む以外に進むべき道はないことを説いたのである。釈尊滅後のすべての仏弟子と仏教徒たちは、この阿難の問いを自らの問いとして受け取っていった。この「自灯明法灯明」の教えは、時代や地域を越えて伝えられた仏教の核心なのである。灯明たる法とは何か、それに依るべき自らとはいかなる存在か。こうして仏教の探求の旅が始まるのである。」『釈尊の教えとその展開ーインド篇ー』(勧学寮編)

ある日、小学生の息子が唐突に「死んだらどうなるの?」と聞いてきた。

突然の重たい質問に、何とか平然を装いながら「仏さまに成るんだよ」と返答してしまった。

息子は「何ソレ?」「どゆコト?」と核心を突いてきた。

僧籍にありながら、アタフタ… 息子に伝えてあげられない。

阿弥陀さまの不可思議光のはたらきを凡夫の私がすべて理解出来るわけもなく、しどろもどろ…「仏さまがお前を仏にしたいって願っておられるんだよ」と伝えた。

息子は「ふ~ん」と納得していない様子。

「でも、お父ちゃんが死んで仏さまに成ってくれるなら手を合わせるよ」と言ってくれた。

その事が、ものすごく嬉しかった。

親鸞さまは『教行信証(化身土巻)』において「今の時の道俗、おのれが分を思量せよ」と仰せになる。阿弥陀仏の光明の“法”とは何か。また、その法に照らし出された私“自”とは如何なる存在か、それを拠り所“島(洲)”として、聴聞しながら犀の角の様に歩み続けて行きたいと思います。

釈尊の最後の言葉は

「さあ、修行僧達よ。お前達に告げよう、『諸々の事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成なさい』と。

これが修行を続けて来た者の最後の言葉であった。」『ブッダ最後の旅』    以上

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