法話

4月法話 立教開宗の意義

立教開宗の意義                       

常圓寺 井上敬信

 

 築地本願寺にて4月26日から29日まで親鸞聖人生誕850年、立教開宗800年の法要がお勤まりになります。立教開宗法要は親鸞聖人の主著である『教行信証』が元仁元(1224)年に成立したということに由来します。私自身は『教行信証』の完成は弟子の尊蓮に書写を許した時と考えたいので宝治元(1247)年を立教開宗の年としたいと思っております。

 

 親鸞聖人は承安三(1173)年5月21日に京都日野にて誕生されました。当時は平安時代末期、貴族の時代から武士の時代への変革の時代でした。聖人は貴族の長男に生まれましたが、わずか9歳で出家されます。そこから求道の道が開かれていくのです。

 比叡山にのぼられ、20年もの間修行されました。生死出づべき道を求めて法然聖人に出会い、一生涯の師匠として念佛とともに一生を終えられたのです。

 

 親鸞聖人は自分の著作の中で「浄土真宗」「真宗」と使われていますが、あくまで「浄土を顕かにする真実の教え」という意味であり、法然から伝えられた教えのことであり、親鸞聖人自身に独立開宗の意思は無く、法然聖人に師事できたことの生涯の喜びの表明された言葉であります。

ですが私たちは法然上人を元祖と仰ぎ、親鸞聖人を第二祖とせずに宗祖としているのです。それは親鸞聖人が私にとって阿弥陀仏の救い、他力念仏の教えをお説き下さっているからであり、浄土真宗の教義体系を明らかにされているからです。

 

法然聖人は『選択集』に浄土宗の独立、立教開宗の要件として、①宗名(浄土宗)②所依の経典(三経一論)③教判論(聖浄二門)④相承(震旦の五祖)を挙げられます。これまでの仏教の中から、阿弥陀仏の救いの教えを浄土宗として独立(立教開宗)されたのです。

それに対して親鸞聖人は聖人の主著である『教行信証』にその要件が備わっており、法然聖人の要件に合わせれば①は浄土真宗、②は『大経』、③は二双四重、④は三国七祖(七高僧)といただけ、特に教相判釈、仏教のあり様を整理し、釈尊の出世本懐を明らかにすることが、法然聖人と違う要件であるから宗祖と崇めているのです。

 

 親鸞聖人の教義の特色は他力本願、信心正因、悪人正機、現生正定聚の四つです。

他力本願とは阿弥陀佛の願いのはたらきによって衆生の救済が成立するということです。

信心正因とは浄土往生のまさしき因種は信心であるということです。法然聖人は聖道門の行と比較するために念佛往生の救いを示されましたが、十八願成就文から信心一つで救われることをお示しくださいました。またこの信心が自分がおこす信心ではなく、阿弥陀様から回向された他力廻向の信心であります。

悪人正機とは親鸞聖人の言う悪人とは、「自らの力で迷いを離れることができない人」のことで、正機とは「めあて・対象」のことです。つまり、悪人正機とは、「自らの力で迷いを離れることができない人こそが、阿弥陀佛のすくいの対象である」ということです。

現生正定聚とは、死後に浄土に生まれてからの救いではなく、今すでに仏に願われ、仏になるべきことが定まった身として生かされていることに気づかされることです。

死んでから、浄土に往生してからの救いではなく、今ここでの間違いない救いを親鸞聖人はお説きになられたのです。そのことを大切にさせていただく法要がこの度築地本願寺で勤修される法要であります。 南無阿弥陀佛